流れ星スペシャル
店長の富樫剛。
確かオレより5歳ほど上。
言っとくけど、オレはこいつが大キライや。
いつもいつも遠まわしに、オレのことだけイビッてくる。
「ま、ええか。せっかく来たんやし」
もったいつけて、富樫さんは言った。
ハイハイ。
「いらんかったら、帰りますよ」
「や、ええわ、可哀想やし」
手を休めずにそう答えながら、富樫店長は横で焼いているアルバイト大学生に爽やかな笑顔を向ける。
「ユースケ、悪い。『洗い』に入ってくれる?」
『洗い』っていうのは、客席から下げてきた食器を洗う係。
ホールも厨房もフル回転となる忙しい時間帯は、皿を洗う余裕すらない。
だから流しは、すでに汚れた皿やグラスでいっぱいになっていた。
「はいっ」
店長の指示に元気な子供みたいな返事をすると、その大学生は流し場へと移った。