流れ星スペシャル


会社から家へのルートを変更して、アメ村界隈まで自転車を滑らせた。


少し南へ入っただけなのに、夜でもやたら明るく賑やかになる。


店の近くに自転車を置いて、あとは歩いた。




お! やってる!


通りに出て目に入ったのが、流れ星の店先に吊るした提灯の赤。


それがまぁるくほんのり灯っているのを見て、やっとホッとした。




道路に面した窓に貼りついて中を覗くと、店内は満席で待ち客もでているようだ。


桂木さんは?


突き当たりに見える焼き場にも、女の子がひとり忙しく走り回るホールにも、その姿はなかった。




扉を開けて中へ入ると、すぐそこに数人の男女がベンチに座って待っている。


「お姉さんひとりやったら、カウンターがあいてんで」


と店員のように教えてくれた。


「じゃ、お先にすみません」


待合からホールへと足を踏み入れた途端
「いらっしゃいませっ」と元気な男の声が響き渡った。


「いらっしゃいませー」


数名の声がこだまする。



その中に桂木さんの声は……、ん~、聞こえたような聞こえなかったような。


< 122 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop