流れ星スペシャル
会社から家へのルートを変更して、アメ村界隈まで自転車を滑らせた。
少し南へ入っただけなのに、夜でもやたら明るく賑やかになる。
店の近くに自転車を置いて、あとは歩いた。
お! やってる!
通りに出て目に入ったのが、流れ星の店先に吊るした提灯の赤。
それがまぁるくほんのり灯っているのを見て、やっとホッとした。
道路に面した窓に貼りついて中を覗くと、店内は満席で待ち客もでているようだ。
桂木さんは?
突き当たりに見える焼き場にも、女の子がひとり忙しく走り回るホールにも、その姿はなかった。
扉を開けて中へ入ると、すぐそこに数人の男女がベンチに座って待っている。
「お姉さんひとりやったら、カウンターがあいてんで」
と店員のように教えてくれた。
「じゃ、お先にすみません」
待合からホールへと足を踏み入れた途端
「いらっしゃいませっ」と元気な男の声が響き渡った。
「いらっしゃいませー」
数名の声がこだまする。
その中に桂木さんの声は……、ん~、聞こえたような聞こえなかったような。