流れ星スペシャル
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
スレンダーでカッコいい今どきの女の子が聞きに来てくれた。
「カウンターになりますけど、よろしいですか?」
「あ、はい」
席まで案内してもらう間
「ちょっと注文聞いて」とか「ビールまだ?」とか、客席からイラだった声がかかった。
「はーい、すぐ参りますんで」
と、店員さんはいちいち笑顔で返事をしている。
「あの、わたしトコワカ商会のものです。様子が気になって来ただけやから後回しにしてください」
カウンターの椅子を引きながらそう言うと、その子はホッとしたような笑顔になった。
「そうなんですね」
「あの、桂木さんは?」
そう聞いた途端、焼き場のもっと奥からガラガラガッシャーンと食器の割れる音が鳴り響いた。
「プフ、いてはりますよ」
「今の音……ですよね」
今のはお皿が一枚割れたというような可愛いらしいものではなく、積んである食器を全部倒した、というような音だった。