流れ星スペシャル
トシくんの右手がゆっくりと前に伸びる。
その手は女性の髪をかすめて、頬に触れる。
目に一杯溜まった涙がはらりとこぼれるのを、親指が優しく拭った。
そのままトシくんは少し腰をかがめて、その子の唇にそっと口づける。
ネオンに彩られた幻想のように……。
う、うわ……っ、し、しちゃうの? キス……!?
「はい、お釣り」
トシくんはスッと体を離すと、内ポケットから今しまったばっかの封筒を取り出した。
封も切らずに、それをそのまま彼女の手に握らせる。
「トシヤ……」
「そーゆーお金、もったいなくて使えんもん、オレ」
「け、けど、」
「一生懸命働いて貯めた金なんやから、ちゃんと自分のために使い」
優しく諭すように、トシくんが言った。
「これが自分のためやもん! トシヤが好きすぎて、もうどうしたらいいのか、わからへん……」
うつむいて泣き出してしまったその子の頭に、トシくんはポンと手を置く。
「誰とでも平気でキスするような男、……やめとき」
静かな、息遣いのような声だった。
「おいで、ナルちゃん。タク拾うわ」
それからトシくんはその子の手を引いて、通りに向かって手をあげた。
ちょうど来たタクシーに彼女を乗せて、それを見送る。
そうしてトシくんは道路を渡り、店の中へと戻っていった。