流れ星スペシャル
「おい、あれ誰や?」
不意に真横で声がした。
地獄の底から響くような、ドスのきいた低音ボイス。
「今キスしてたん、うちのホストか?」
その声が目の前を通り過ぎていく。
そのまま自販機の前で足を止めたのは、二人組の男だった。
「店の前でキスするとか、安っぽいマネさせるな。他の客が見たらどーすんねん」
そう憤慨しているのは、濃いめの顔立ちの、やたらデカい人。
黒っぽいストライプのスーツにブルーのシャツ。
足元にはピッカピカの黒いエナメル靴。
まだ30代っぽいのにスゴイ威圧感で、もしホストでないならヤバい筋の人にちがいない。
「はっ、申し訳ありません」
その男に従うようについてきて、今自販機で缶コーヒーを買っているのは、シルバーのスーツに薄紫のシャツ。
バリバリのホスト顔だ。
「誰や、あいつ。シバいとけ」
もう一度、デカい男は言った。
「代表。あれ、トシヤくんですね」
コーヒーを手渡しながら、若いほうのがささやく。
「はぁっ? トシヤか?」
「めずらしいですね。トシヤくんが客に手を出すなんて」
「あいつ、女に冷たいからな」
「いや……ときどきありません?あーゆーこと。いっつも素っ気ないのに急に優しくしたりとか、さすが絶妙です、トシヤくん」
その言葉に、代表と呼ばれた男が大げさに首を横に振った。
「ちゃうちゃう。あいつのはただの気・ま・ぐ・れ」