流れ星スペシャル


「そういえばトシヤくん、最近ちょっとキゲンいいかも」


若い男はそう続けた。


「今日もOLの客に『経理知ってる?』とか『電卓打つのん早い?』とかって、ミョーに楽しげでしたし」

「なんや、あいつ。OLとつきあってんのか?」


「あっは、それはどうかわかりませんけど、最近ちょっとだけ明るいっス、トシヤくん」

「お天気屋か、まったく……」


そんな話をしながら、男たちは去って行った。




取り残されたわたしたち。


「「はぁ~……」」


うるるんとともにタメ息をついた。


「何しに来たんやろ、ウチら」

「トシくん全然知らん人みたいやったな……」


店で若干キレながら、てきぱきと動く姿はここにはなかった。当然だけど。


「お客さんになって、いつもエラそーなトシをかしずかせたかったのに」


なんて、うるるんはがっかりしている。


「来週出直す?」


一応そう聞いてみた。


「ん~……もういいや」


テヘッと、うるるんは笑う。


同感。

とりあえずホストバージョンのトシくんは見れたことだし。


「帰ろっか」

「うん」


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