流れ星スペシャル
「じゃー、うるるん、遅いけど大丈夫?」
「うん! アズちゃんも気をつけてな」
自転車を回収してからは、うるるんとは別方向になる。
深夜とはいえ、まだまだにぎやかなミナミの街を、ひとり自転車で抜けて行く。
それが四ツ橋へ出ると、急に人がまばらになり、辺りが静かになった。
いつもはトシくんと自転車を連ねて帰る道だ。
店の勤務が遅くなるときには、桂木さんは必ずトシくんと一緒にわたしをあげてくれる。
帰る方向が同じだから、てゆーか、トシくんの帰るルートの途中にわたしの家があるから、いつもマンションの下までトシくんに送ってもらっているんだ。
逆にうるるんにラストまで残ってもらうときには、桂木さんが彼女を送っていく。
ふたりは同じ方向だから。
でもまぁ、明るくて大きな道だから、ひとりでも怖くはない。
スイスイと自転車を滑らせていった。
「さむ……」
季節は秋から冬に向かっていて、夜間ともなれば結構冷え込む。
「あ~あ、もっと着込んで来ればよかった」
なんせ今日はホストクラブへ行くつもりのコーデで、かなりな薄着になっていた。
ちょうどいい感じの上着がなくて、薄手のブルゾンをチョイスしたから。
しかもスカートだし。
のわりには、入店すらできなかったんだけど……。
キキーッ
四ツ橋筋を北上して、長堀通りとの交差点を左に折れたとき、後ろから追い越して行ったタクシーが一台、目の前で急停車した。