流れ星スペシャル
「えー、お酒飲んでる人の後ろに乗るんとか、怖いからいい」
わたしは自転車から降りずにそう答える。
「全然酔ってないで。大丈夫、大丈夫」
トシくんは屈託なく笑う。
「は? スッゴイお酒臭いけど? 酔っ払い運転はチャリンコでもあかんって、知らんの?」
トシくんの手からハンドルを死守して、にらみつけてしまった。
「そっか、」
そのわたしの態度に戸惑うように、トシくんはハンドルから手を離した。
それからトレンチコートを脱いで、わたしの肩に羽織らせる。
「はっ? いらんよ、こんなん」
「寒そうやし」
「わたし、こ~んな香水の匂いプンプンするの苦手やねん」
う~、険あるな……。
言いながら自分でもそう思ったけど、口が勝手に動いてしまう。
「トシくんて、こーゆーことサラッと出来る人やったんや」
「こーゆーことって?」
「女の子にコートかけたりとか。めっちゃホストっぽい」
トシくんのほうを向いてはいたけれど、目は見れずにそう言った。
「だってオレ、ホストやもん」
だからトシくんがどんな顔をしてそういったのか、知らない。
「それに、今日はアクセサリーもジャラジャラつけて、ずいぶんオシャレやな? いつもはオフやから手ェ抜いてるの?」
どうしたことか、気分がザラザラして、吐き出すイヤミが止まらない。