流れ星スペシャル


「だ、誰に殴られたん?」

「あのボケ」

「誰よ、それ」

「オーナー」

「オーナーって?」

「代表。ホストクラブの」


あ……!

ダイヤモンドダストの前で見た、デカくて恐ろしげな人物を思い出した。


「店辞めたいって言いに行ったら、いきなりガツンと」

「殴られたん?」


トシくんがコクッとうなずく。


「『絶対許さへん』って。『辞めるんなら、お前にやったもん全部返せ』って言われた」


「え、お金?」


一番あてはまるものを聞いてみる。


「いや……ちがうと思う」

「じゃ、洋服とか靴? お下がりでもらったりとか?」

「デカいわ」

「あ、時計!」

「もらってない」


「じゃあ、何よ『返せ』って?」


そう聞くと、トシくんはムスッとつぶやいた。


「恩とか、真心とか……?」


「えーっ、そんなん返せって言うかな?」

「言う言う。あいつは言うねん。どんだけ恩着せがましいか」


トシくんはうんざりと息をつく。


「そう? ホンマにお金借りてないの?」


ここ大事。もう一度念を押しておいた。


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