流れ星スペシャル


その言葉に驚いて振り向いて、社長は大慌てでオレの口をその手で塞いだ。


『こらっ、何ちゅうこと言うねん』


社長のその手は大きくて丸まっこくてあったかくって、煙草の匂いがした。




『わっはっはっはっ』


それから社長は大声で笑いながら、オレの頭をぐりぐりと撫でたんだ。


あー、この人はこんなふうに踏みつけにされても『死ね』とか思わんねんな……。




いきなり子供みたいな笑顔になった社長を見て、そんなことに妙に感心したことを思い出した。






そろそろ店へ行く時間か。


寝転んでいたソファから、のっそりと立ちあがる。




気乗りはしなかった。


社長は来るだろうか?
今度はオレに、何か言ってくれる?




ハッ、あほくさ……。


叶うはずのない期待が頭を掠めるから、先にペシャンコにしておく。


社長はオレのことなんか知らん。


今更こんな茶番に付き合わされるのは、まっぴらや。


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