流れ星スペシャル
身支度を整え、チャリで店へ向かった。
結局、横内さんの退職後、社長は助言を無視して富樫さんを店長に据えた。
学生ではないアルバイトは富樫さんとオレだけだったし、年長の富樫さんに任せるのが順当な線だと、オレだって思った。
以来会社からあがってくる分析表に、細かな書き込みがされるようになったのを、オレは知っている。
『この数字が大事。毎月注目すること』
『今月はここがアカン』
『ここは売上の30%以内に抑えるように』
などなど。
赤いボールペンでびっしりと書かれた右下がりの悪筆は、どうやら社長のものらしかった。
そんな資料を携え、社長はちょくちょく富樫さんに会いに店に来ていたんだろう。
書類はよく、会社の封筒に入ったまま、休憩室の机の上に放置されてあったから。
あの書き込みが誰のためのものか、
どーゆー思いで書かれたものか、
当の本人には伝わらなかったようだ。
しゃーないから、オレがファイルする。
で、休憩のときとか、よくそのファイルを見るようになった。
数字の中に隠された意味も、グラフの読み方も、わかってくると面白い。
社長の解説はおそらくすげー初歩的なことから始まっていて、オレは『なるほど』と思いながら、何度も何度も見返してきた。