ヴァイス・プレジデント番外編
「正しいんじゃないでしょうか、ある意味」
「俺をなんだと思ってるの」
言っていいの? という思いをこめてじろりと見おろすと、ふてくされたような視線とぶつかる。
さすがに心当たりはあるようだけど、あくまで悪びれないその顔に、我ながら冷たいため息が出た。
よくそんな、堂々としていられますね。
最近、彼と関係のあった女の人と立て続けに出くわしていた私は、すっかりそんな思いだった。
ていうか木戸さん、知ってるんだな、私たちのこと。
まあ彼はヤマトさんと仲がいいし、仕方ないのか、そのへんは。
それにしても、男性の秘書って珍しい。
「こういう会社では、そうかもね。大手の、特に昔ながらの企業なんかだと、秘書室長っていったら男だよ」
「そうなんですか」
一時的に隣の席となった城さんがうなずく。
偶然にもヤマトさんと同い年だった彼は、秘書一筋でやってきた人で、すなわちベテランだ。
私はもはや、どちらが先輩かわからないような感じで、それでも彼の明るく飾らない性格のおかげで、楽しく引き継ぎをした。
「どうしてまた、秘書に?」
「バカにしなさんな。そういう会社だとね、秘書室から広報や経営企画っていうのが、ひとつの出世ルートなんだよ~」
ちっちっと指を振りながら、爽やかと言うには華やかすぎる顔を、にやりと歪める。
バカになんてしてないですよ、ただ、すごく意外だっただけで。
だって、とても秘書なんてサポート役に徹する人には、見えない。
いや、見た目は秘書らしく、黒い髪をさっぱりと短くし、細いフレームの眼鏡が知的で、清潔感たっぷり、かつ控えめなんだけど。
ひとたび口を開けば、ただのそこらのお兄ちゃんだ。
いや、そこらのお兄ちゃんより、口が悪くて乱暴だ。