ヴァイス・プレジデント番外編
ヤマトさんの人見知りを瞬時に見抜いたのか、早々に城さんはあのキャラを出し、まるで同級生のように彼に近づいていった。

ようやく秘書というものに慣れたところで、とんでもない変わり種に当たってしまったヤマトさんは。

最初すっかり動揺していたものの、仕事場に友達が増えたような感覚でいればいいことに気がついたんだろう、すぐに仲よくなり。

気がついた時には、ヤマト、薫、と呼びあう、変わった役員と秘書の関係ができあがっていた。


ほとんど手つかずのヤマトさんのパスタボウルから、野菜とスモークチキンだけもらう。

ああ見えて城さんは口が堅く、ものすごく細やかで、人の面倒を見ることに長けていて。

業界や企業間の空気なんかも瞬時に読みとるし、言われてみれば確かに、この上なく秘書に適していた。


執務中は折り目正しい秘書として振る舞い、その仕草は優雅で美しく、だけどあくまで男性的で、颯爽と心地いい。

ああいう秘書さんもいるんだなあ、と私は最後の最後でひとつ大きな勉強をした気分だった。


本を片手にパスタを食べながら、そういえば連休は、ヤマトさんがどこか行きたがってたな、とぼんやり考えた。

なんだかんだ、住んでいるところが近いせいで、会いやすくて助かる。

平日に泊まったりすることはないけれど、週末は、どちらかの部屋で過ごすのが、もう当たり前だった。


中期経営計画も発表し、来月の株主総会が近づくまでは、少しヤマトさんも落ち着くはずだ。

車でどこか行きたいけれど、そうすると泊まりがけじゃない限り、ヤマトさんはお酒を飲めないので、気の毒だな、と考えを巡らせる。


知らせが入ったのは、そんな頃だった。



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