ヴァイス・プレジデント番外編
いつの間にか、出社したら私の出したサプリメントを摂取するのが、彼の習慣になっている。

食事の状況や、朝に見てとった体調によって、私はサプリの中身を少しずつ変える。

彼はそれを見て、自分の体調を知るらしい。


専属秘書ならではの楽しみ。

きっと私は、奥様と同等かそれ以上に、彼のことを考え、彼のそばにいる。

優越感というほどではないけれど。

この特権的な楽しさは、経験したことのある人にしかわからない。





「チャオ、ベッラ~」



ブォナンノ~と二本の指を掲げて、延大さんが秘書室に入ってきた。

イタリアで新年を過ごしたらしいから、まだ抜けきってないんだろう。



「マイネリーベたちにお土産だよ」

「あら、ドイツも行ってらしたの」

「イギリスも行ったし、オーストリアも行ったし、一瞬アメリカにも行って、友達んちを軒並みハシゴしてきたよ、もうくたくた」



光沢のある美しい箱が、次々とメインデスクである私の机に置かれる。

和華と暁も寄ってきて、きゃあーと歓声を上げた。

全員に、それぞれバリエーションの違う、シルクのストールと香水のボトルをくれたのだ。

もちろん日本未入荷品。



「好きなの選んでくれていいけど、一応、俺のイメージではね」



これが暁ちゃんで、と言いながら、3つの組み合わせに分けていく。

和華には、ぱりっと華やかな赤のストールに、艶やかなムスクの香り。

暁はブルーグリーンに、スパイシーな香り。


そして私には。

クリーミーなピンクのストールと、健康的なフローラルの香り。

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