ヴァイス・プレジデント番外編
でも確かに、私は陽気なお酒を知らない。

このへんで教わっておくのも、悪くないかもしれない。

それに彼となら、きっと、どう転んでも愉快な席になる気がする。



「場所とかは、俺がセッティングするから」

「それじゃ、私からの贈り物になりません」



そこまでしてもらうわけには、とさすがに慌てて言うと、延大さんが、ふいに笑顔を消した。



「じゃあ、もうひとつ、いい?」

「…はい」



彼の、まったく笑んでいない顔というのは、とても珍しい。

私はもしかしたら、初めてそれを前にして、どくんと心臓が鳴るのを感じた。

延大さんが私を見つめて、静かに言う。



「一緒に飲んでくれるんなら、その日は、帰すつもりはないから」



彼はそこで言葉を切って、灰皿に煙草の灰を落とすと、お箸を持っていた私の右手首にちらっと目をやって。

再び、私を正面から見すえた。





「もし嫌なら、飲みごと断ってほしい」






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