ヴァイス・プレジデント番外編
長男なのだし、いずれは経営者にと会長も思ってなかったはずは、ないだろうに。

そう言うと、延大さんは笑った。



「経営者が経営しか学んでなくてどうする、ってのが、親父の教えでね」

「会長ご自身、理工学部ですものね」

「そう。まあ親父の言葉に従ったわけじゃないけど、結果的には俺たち全員、経営以外を専攻してるね。末の弟も法学だし」

「じゃあ、経営学は、どうやって?」

「高校の頃から、経済関連の新聞、雑誌、経営系の実学書なんかを読まされたり、親父の話を聞いたりで、自然と」



私は目を丸くするばかりだった。

そんな家庭もあるのね。


延大さんの家庭が、うらやましい。

大黒柱として、恥じるところのない、むしろ誇らしいばかりのお父様がいて。

自立した、母であり社会人であるお母様がいて。



「俺、思いついちゃった」



唐突に延大さんが言った。

どこかうきうきと、素敵ないたずらを発見したような顔で。



「なんですか?」

「俺の誕生日に、一緒にお酒、飲んでよ」



プレゼントは、それがいい、とにこっと笑う。



「あ、もしかして、もう決めてくれてた?」

「いえ、それが、まだなんです。なかなか難しくて」



なるほど、そういう手があったか、という思いと、そんなんでいいの? という思いが重なる。



「いいお供になるか、わかりませんよ、私」

「俺が楽しいお酒、教えてあげるよ」



にこにこと言われるのに、そんな、成人したての小娘じゃないんだから、と恥ずかしくなってしまう。

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