ヴァイス・プレジデント番外編
私が主従関係のように見ていた両親の関係にも、きっと、愛はあったのだ。

執着でも依存でもない、純粋な愛が。



「私、お母さんのところに行こうと思うの。久良ちゃんも来る?」



お母さん、とは同じく首都圏に住む、母の母のことだ。

つまり私の祖母で、祖父はもう他界している。

高校生だった母の結婚に両親が賛成するわけもなく、祖母の家に行く時に父が同行することはなかった。

そんな状態でも孫は可愛いらしく、私は、行けばよくしてもらっていたのを覚えている。

けれど、それもごく子供の頃のことで、たまに日本に立ち寄った時に、少し顔を見せるていどだったので、ほとんど記憶がない。

秋田よりも近くにいながら、もしかしたら向こうの親戚よりも縁遠く感じていたかもしれない祖母だった。


私は、ううんと断り、母に、今度、延大さんに会ってほしいと伝えた。

母は目を丸くしたあと、涙を浮かべて喜んで。

何を着よう、と実に女らしいことを口走り、私を笑わせた。



ねえ、延大さん。

どうやらね、私にも、ようやく自慢できる家族ができたみたいよ。

あなたは私の荷物を一緒に持つと申し出てくれたけれど。

残念ながら、タッチの差で、その手は必要なくなったようなの。


だから、今度は私からお願いするわ。

この母の、家族になってあげてくれる?



私も両親と同じくらい、愚かで頑迷だったのね。

想像できないものは手に入らないと、思いこんでいた。


そうじゃないのね。

だって、今日の母を、誰が想像できた?

こんな、私と母の関係を、いったいどうやって想像できた?


誰もが「こうあるべき」という枠に、いつしかとらわれてしまいがちで。

きっと、それをとりのぞくには、何かきっかけや、長い年月が必要だったりするのね。


それだけなんだわ。



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