許嫁な二人

   「やめろ!」



 そう叫んで、透はおさえつけている二人をはね飛ばし、唯の
 目の前の男子生徒をつきとばすと、両手で唯をかかえこんだ。

 透におされてよろけた体を立て直しながら、大柄な男子生徒が
 こちらを向く



   「てめえ、、、」



 透の肩越しに、ふりあげられた握りこぶしを見て、唯が叫び声
 をあげたのと、



   「君たち、何をしているんだ!」



 という巡回中のおまわりさんの声が聞こえたのが同時だった。



   「やべえ。」



 とつぶやき、3人の男子生徒は透と唯をほっぽって逃げていき
 唯たちの目の前をおまわりさんが、それを追って走っていった。

 あたりは急に静かになり、まるで何事もなかったかのように
 車が一台、通っていった。



 やっと気持ちがおちついて、気がつけば目の前には透の胸があった。

 もうだいじょうぶなのに、透は唯を離さない。

 心無しか透の体がふるえているような気がして、唯は小さな声で
 透を呼んだ。



   「透、、くん、、。」



 (また傷つけられる唯を見ることになるのか)


 そう思ったら、透は生きた心地がしなかった。

 守るために腕の中にいれた体は簡単には手放せない。

 彼女を守りたい、、、。

 もう二度とだれにも傷つけさせはしない。

 透は腕をふりほどかなかった。

 腕に力をこめ、透は強く唯を抱きしめた。



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