許嫁な二人
隣で透が息を詰めたのが、唯にはわかった。
目の前には、制服をだらしなく着崩した桜下南高校の男子生徒が
三人いて、ニヤニヤ笑うような顔で透をみている。
「なんだぁ 女連れか、人の女に手ぇだしといて、今度は
かわいこちゃんとデートかよ。」
髪の毛をツンツンにたてた一番大柄な男子生徒がそういうと
一歩前にでた。
それにあわせて透も一歩まえに踏み出し、唯を背中にかくす。
「なんだよぉ かくすなよ。」
そう言って、その生徒はぬっと首をつきだして唯を見た。
上から下まで舐めるような視線に、唯はぎゅうと身を縮こませて
透の背中にかくれる。
「いい女じゃねえか。」
一番大柄な男子生徒がうれしそうにそう言い、顎をしゃくると
両側にいた二人がぱっと透に飛びかかり、透の腕と肩をおさえて
ブッロク塀におしつけた。
守ってくれていた透の背中がなくなり唯は足がすくんだ。
逃げたいと思うのに、足が動かない。
目の前の男子生徒がにやりと笑い、ぬっと手を伸ばしてくる。
唯は目をつぶった。