許嫁な二人
身を翻し、その場から去ろうとする唯の腕を透はつかんだ。
唯がぴくりと震え、体をかたくしたのが、掴んだ腕から伝わってくる。
「試合にでるんだね、じゃあ試合が終わったらここで。」
早口で告げる透の顔をじっと見て、唯は曖昧にうなずいた。
その顔に困惑の表情をよみとり、透の手が緩む。
それに気づいた唯がさっと体をひいた。
そして透の方をふりかえりもせず、走り去っていった。
目の前で行われている行射を見ているのに、透の頭のなかはさっき逢った
唯のことでいっぱいだった。
透にあっても唯は少しもうれしそうではなかった。
(まるで俺に逢いたくなかったような顔だった)
あたりまえか、、、と透は苦い笑みをもらす。
唯の気持ちは、卒業式の日に思い知ったじゃないか。
小里で待っていても、唯はあらわれなかった。
それなのに、俺はまた関わろうとしている、、、
考え事をしているうちに、学生の部は終わり、成人の部がはじまった。
次々と、的を射ていく人のなかに唯をみつけ、透はじっと見つめる。
すみずみまでぴんと意識が張り詰めた美しい所作、静かな佇まい、
的を外さない正確さ、唯の姿は中学のときからかわらない。
気がつけば、すべての行射はおわり、周りの人たちは席を
たちはじめていた。