許嫁な二人
佳奈に先に弁当を食べているようにと言いおいて、透は
足早に杉林にむかう。
今朝と同じところに唯の姿をみとめて、うれしいと思う気持ちと
共に、いいしれない怖さが透のむねにわきおこった。
でもそれも一瞬のことで、透はつとめて平静な声で唯を呼んだ。
ふりむいた唯に今朝のようなとまどいの表情はない。
そのことにほっとしつつ透は唯のそばにたった。
「優勝おめでとう、やっぱり唯はうまいな。」
「そんなことないわ。」
「わざわざこのために東京へでてきたのか?」
聞かれたくないと思っていたことを聞かれて、唯は内心うろたえた。
「違うの、私、、、ここに住んでるの。」
「は?」
「短大を卒業して、すぐ家の仕事を手伝うのではなく、
少し外で修行しなさいって言われて、この神社で巫女の
仕事をしてるの。
この神社は碓氷神社とは縁続きで、、、。」
唯の言葉を聞いた透が、おどろきに目を見開いた。
唯はまともに透の顔が見れない。
「じゃあ、1年もまえから東京に住んでたってこと?
俺が東京にいることは知ってただろう。」
「、、、ええ。」
うつむいて顔を見せようとしない唯に透はため息をもらした。