許嫁な二人

 透の告白を ”ダメだ” と否定した唯の口から出てきた言葉は
 神社の跡取りとお見合いだった。

 自分の人生と唯の人生は、もう絶対交わらないのだと、透は思う。

 小さい頃から夢だった、飛行機作りために工業大学の航空機学科に
 入学できて、透は勉強にうちこんできた。

 4年生になった今は、大学院にすすむか、就職するかを
 決めなければいけないが、本格的に設計をめざすなら、大学院に
 進んだほうがいい。

 そういう大事な時を自分は迎えるのだから、、、
 唯の家に事情に自分はなにもしてやれない。

 いっときの感情に支配されて、告白してしまったことを
 透は後悔している。

 もし、何もいわなければ、幼馴染としてこれからも逢えたのに。


  (じゃあ、なんでまた出会ったんだ)


 いつもそうだ。

 手の届きそうなところにいるのに、いざ手を伸ばすと、幻のように
 唯はフイっと消えてしまう。



 降車駅を知らせるアナウンスに、透はノロノロと体をおこすと
 ドアの近くまであるいた。

 ひらいたドアからホームへ足をふみだしたところで、スマホが
 着信を知らせる。

 耳に当てると懐かしい声がした。



   「あ、久しぶり、兄貴、元気だよ。」



 かけてきたのは、桜下の家の近くに結婚して住んでいる兄だった。



   「え、なんだって?」



 問い返した透の声に兄の声がかさなる。



   「「じいさんが倒れた、すぐに帰ってこい」」
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