許嫁な二人
「綺麗な花嫁さんだこと。」
「本当にね。」
1週間後のその日は、春の日差しが溢れる、美しい日になった。
白無垢姿の唯は、紋付羽織袴姿の透にてをとられながら、参道を
歩く。
花吹雪がまい、すべてのものが若い二人を祝福しているようだ。
「何故、俺たちが許婚なのか知ってるか?」
突然、透が小声で話しかけてきた。
「詳しくは知らない。」
「碓氷の姫と臣下の侍の恋物語がはじまりなんだそうだ。
身分違いで結ばれない自分たちの想いを後世に伝えた、、。
それが、俺と唯ってわけ。」
「私たちは結ばれる運命だった?」
そう問いかけた唯のてを透が強くにぎる。
「必ず添い遂げようという意思があってこそ、碓氷と瀬戸の
血を継いでいけるんだとじいさんに言われた。」
「うん。」
「もう、俺から離れるなよ、ていうか離さないからな。」
「うん、ずっと透の隣にいる。」
時折ふく風が、桜の花びらを舞い上がらせ、その中に佇みながら
唯は思った。
何度もわかれた二つの道は今、やっと一つになった。
そして、私たちはそこを二人で歩いていく。
風に舞う花びらを目で追いながら、唯は透に握られた指先に
そっと力をこめた。
〜おわり〜

