許嫁な二人

 透は進学ではなく、就職を選んだ。

 飛行機の設計ではないけれど、飛行機のエンジンを開発するその
 会社を会社訪問したときの雰囲気がよかったからといって
 この春からは、そこの社員だ。

 大学院進学をしなかったのは、結婚を急ぐあまりのような気がして
 唯は、気にしたが、透は耳をかさなかった。



   「唯が、またいなくなりそうで、不安なんだ。
    毎日、唯の声で送りだしてもらって、唯の声でむかえて
    もらわなきゃ、この不安は消せないと思う。」


 しごく真面目な顔で、透はそう言った。





   
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