許嫁な二人

  (一体どこへいったんだ、、、)


 すぐに入浴時間になり、点呼がはじまる。

 それ前には見つけなければと、透は焦った。

 1階は佐川が見てくれると言った。


  (3階からまわろう)


 透は階段を駆け上がった。

 3階についたとき、複数の足音がバタバタと透のあがってきた
 階段とは別の階段の方へ走っていく音が聞こえた。

 後を追いかけたかったが、唯を見つける方が先だと透は思った。

 開けれる部屋は片っ端から開けて見ていく。

 どの部屋も無人だ。


  (ここも、、、!)


 透は研修室と研修室に挟まれているような小さい用具室のドアを
 開けた。

 薄暗い中に誰かが倒れているのが見える。



   「唯!」



 駆け寄って抱き起こし、顔を覗き込む。

 唯の目はかたく結ばれていて、口からは忙しなく息がもれていた。

 体が汗でびっしょりだ。



   「唯!」



 もう一度、強く呼ぶとうっすらと目を開けた。

 透を認めて、唇がわずかに動く。



   「と、透くん、、、。

   「しっかりしろ!」

   「よかっ、、、た。」


 
 また目がふせられて、それきり呼んでも唯は目を開かなかった。
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