許嫁な二人

 唯が退部、いや、学校自体にこれなくなったことを
 透が知ったのは、2学期がはじまってからだった。



   「なんでも病院が併設された東京の学校へ
    かわったらしいよ。」



 諸井からそう聞かされ、透は頭をガツンとなにかで殴られた
 ように感じた。




 あれから唯は夏休みの部活には顔をださず、誰が何をして
 唯があそこに倒れていたかは、わからずじまいになった。

 なぜか、透が唯を呼び出したということになっており、
 2学期がはじまると、唯の転校の噂とともに
 透と唯が隠れてこそこそ逢っていて、それを見咎められて
 唯は学校に来れなくなったのだという噂があちこちで
 囁かれた。

 噂を聞いて諸井は心配したが、透は黙ったままだった。

 そして心の中で、やりきれない怒りを感じていた。



 いつもそうだ。

 おもしろおかしく騒ぎ立て、根も葉もない噂で人を傷つける。


  (またか、、、)


 と透は思っていた。

 また唯と二人、噂に傷つけられるのだ。

 それに、唯が学校に来なくなって、透は再び摑みかけていた
 何か大切なものが、自分の前から消えたのだと思い知る。

 よく知らない女の子に告白されるたび、なぜ唯の顔が
 心にうかぶのか、、、知る機会はもう、自分には
 やってこない。

 透は空っぽな両手を見つめ、立ちつくした。
< 64 / 164 >

この作品をシェア

pagetop