許嫁な二人

 ミーティングが終わって、透が研修室から外に出た時だった。



    「瀬戸くん。」



 そう呼びかけられた先に、困ったような思い詰めたような顔をした
 佐川はるかが立っていた。



    「ずっと研修室にいた?」



 近づいてきた佐川に唐突に訊ねられ、透は目を瞬かせた。



   「いたけど。」

   「やっぱり、、、。」



 佐川の顔がますます強ばる。



   「どうした?」



 透の問いかけに、佐川は透を廊下のすみに引っ張っていくと
 切羽詰まった声で話しはじめた。



   「碓氷さんがいないんだけど、、。それが、ずいぶん前に
    瀬戸くんが呼んでるっていわれて、どこかへ行ったらしいの。」

   「俺が?」

   「うん、男子はミーティングのはずだし、おかしいと思って
    ミーティングが終わるの待ってたの。
    待ってる間に碓氷さんが帰ってくるかもと思ったんだけど、
    戻ってこなくて、、、どうしよう。」



 透はまわりを見回した。

 幸い回りにはだれもいない。



   「あまり大げさにしないように、二人で探してみよう。」

   「うん、わかった。」
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