許嫁な二人

 ぽたぽたと鼻血がおちる。

 恥ずかしさで蹲った時、ふわりと体が持ち上げられたのを
 唯は感じた。

 見ると、透の顔がすぐ近くにあって、唯は目を見開いた。

 唯をだきあげた透はそのまま無言で歩き出す。





 保健室は無人だった。

 唯をベッドにおろし、透は丸めた脱脂綿を探し出すと
 唯に手渡した。



   「鼻につめろ。」

   「はい。」



 そうして血を止めてから、透はじっと唯の血で汚れたTシャツを
 見ている。



   「それ、今すぐ洗えば落ちると思うけど。」



 ぼそっとした声でそういうと、透は顎をしゃくった。

 何のことかわからずに、唯がぽかんとしていると、シャーと
 ベッドの回りのカーテンをしめ、透が言った。



   「脱いだらよこせ、洗ってやる。」



  (えっ?)


 唯は戸惑った。

 透との間には薄いカーテンが一枚あるきりだ。

 それなのにTシャツを脱ぐの?

 カーテンの向こうを梳かしてみると、身じろぎもせず
 透が待っている。
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