許嫁な二人

 そのままずっと透を待たせるわけにもいかず、唯は
 Tシャツのすそに手をかけるとそれを脱いだ。

 ひんやりとした空気が肌に触れる。

 そこにあった布団の上掛けで、胸をかくしながら
 カーテンの隙間からおずおずとTシャツを差し出した。

 ぱっとTシャツが手から離れたと思ったら、カーテンにうつっていた
 透の影がなくなった。

 ジャーと水が流れる音がする。
 
 その音よりも大きいくらい自分の胸の鼓動が耳に響く。

 なんとかその音を小さくしたくて唯は前屈みに踞まった。

 透と二人きりで静かな保健室にいるのでさえ落ち着かないのに
 私は、なんて格好をしてるんだろう、、、。

 


 しばらくすると、カーテンの間から、ぬっとTシャツが差し出され
 それを無言でうけとると、唯はすばやく身につけた。

 透はうまく血がついた部分だけをつまみ洗いしてくれたようで
 きれいに血がおちていた。



   「あの、、、ありがとう。」



 カーテンをあけてでると、透が唯を見ていた。

 きまりが悪くなって、唯は俯いた。

 目の先に透の体育館シューズがみえる。

 その体育館シューズが、向こうをむき歩き出そうと
 一歩をふみだした。


  (駄目、、まだ、行かないで、、、)

 
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