許嫁な二人

 トラじまの子猫の前にミルクののったお皿をおくと
 小さな舌を出してぴちゃ、ぴちゃ舐めた。



   「かわいい、、、。」



 喉の下に指をいれてひっかくように掻いてやると、
 気持ちよさそうに目を細める。

 子猫の可愛さに、夢中になってあそんでいたら、いつのまにか
 新聞配達の男の子が近くまできていた。



   「ありがとう、見ててくれて。」

   「ううん、遊んでもらったのは私の方かもしれない。」



 唯のそばに同じようにしゃがんだ男の子は、大きな手をぽんと
 子猫の頭の上にのせた。

 骨張った大きな手が、子猫の頭の上を行き来した。

 子猫を見る男の子の目は優しげに細められていて、この子猫は
 いい人に拾ってもらったなと唯は思った。



   「飼うの?その子猫。」



 当然肯定の言葉が返ってくると思ったのに、唯の問いかけに
 男の子は首をふると、



   「家は食いもの屋をやってるから、飼えないな。」



 と言った。
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