許嫁な二人
「えっ、じゃあどうするの?」
うーんと腕組みをしながら、男の子がちらりと唯を見る。
「えっ、うちは、、、。」
多分だめだ、お母さんがアレルギーをもっているから。
言いよどんだ唯の様子で返事を悟ったのか、男の子はふーと
息を吐くと、
「飼い主を探すしかないな。それまでここに
置いておけないか?」
と聞いてきた。
「古いゲージがあるから持ってくる。その中にいれて
神社のどこか隅に置いておけないかな、
俺、時々来て世話をするから。」
「う、うん。」
てきぱきとした話し方に、唯は思わず頷いていた。
「じゃ、これで決まり。俺、店の仕事があるから
急ぐから。」
そう言って立ち上がり、踵を返そうとしたところで
男の子は唯の方に顔をむけた。
「俺、中里 悠。そっちは?」
「碓氷 唯です。」
「そっか、じゃあな。」
さっと手を挙げて石段の方へ駆けていく。
後ろ姿を見送って立ちつくしている唯の足下で、ミューと
声がして、小さな毛糸玉のような体がはねた。