雨のようなひとだった。
近くて遠い、いや、もともと近くなんてなかったのかもしれない。
信号待ちで並ぶ俺たちを車のテールランプが照らす。
影はいつもきちんと隙間がある。平行で、重なった事は一度もない。
手を差し出せばそっと繋ぎ返してくれたが、影でも繋がるのは手だけだ。
彼女がどこから来たのかも、
結婚指輪をしているにも関わらず何故俺の元へ来たのかも、何も知らない。
何を考えているのかさっぱりわからない。
オレンジ色の彼女の横顔を盗み見た。
まっすぐに前を見て、俺の方なんか向かない。
視線に気付けば微笑んでくれる事は知っている。
だけど、俺はやっぱり何も知らないんだ。
胸の端がざわざわと騒ぎ出す。
以前少しだけ疑問に思ったことが大きく膨らんでくるのがわかった。
(そもそも……マキって名前、本名なのか?)