雨のようなひとだった。
俺が彼女の手に手を伸ばしかけたことも、そしてやめたことにも気付いたんだ。
だから少し、本当に少しだけだけど、声が沈んだ。
(寂しい……とか…思ってくれてんのかな)
勝手だと思わないことはない。
だって、指輪をしてるってことは彼女は既婚者だ。
どんな理由があるとはいえ男の元へ身を置いて、その男と手を繋がない事を寂しがるだなんて勝手だと思わない方がおかしい。そう思うのが普通だろう。
それなのに。
(………重症だ)
「?どうしたんです?」
「いや……大丈夫です、帰りましょ。マキさん」
「はい」
大通りにまだ出ていなくてよかった。
いくら手で口元を隠したからって、嬉しさのあまり崩れてしまった顔を彼女に見られなくて済んだから。