ゼロの相棒
ジェノバは、私を止めようとしたが
私は彼を説き伏せると、家の扉を開けて
町へと、丘を駆け下りだした。
薬さえ手に入ればジェノバももっと長生きすることができる。
しかし、番犬がいなくなったとはいえ、
薬屋は今まで、一度しか盗みに成功した
ことがない。
薬だけは、毎回捕まって盗れずじまいだった。
今度こそ……!
ジェノバは日に日に弱っている。
彼だけは…死なせられない……!
私を突き動かすのはジェノバへの想いだけだった。
どんな辛いことでも盗みでも
彼を助けられるならなんでもやった。
私に魔法が使えたら…。
そう何度も思った。
両親を奪った魔法使いを、私は憎んでいたけれど
それでも病を治す魔法があるのなら
命と引き換えにしてでも頼み込むつもりだった。
しかし、この町には魔法使いは一人もおらず
都市で仕事を失った人間しか流れ着いて来なかった。