早春譜
「ところでママ。テレビ局の仕事終わったの? 確かあの人は今。みたいなタイトルだったわね」
「これから最後の交渉に入るトコよ。今この近くにいるらしいの。ホラ、時計台の向こうに見える駅前のマンションよ」
「えっ、そんな近くに芸能人だった人が住んでいたの?」
「もしかしたら詩織も知っているかも知れないな。二年くらい前にソフトテニスの王子様って騒がれていた相澤隼さんって言う人よ」
「駄目」
思わず詩織は言った。
マスコミから隠れるようにアパートから逃げ出したことを聞いていたからだった。
「彼には大女優の息子ではないのかって噂が常に付きまとっていたの。もしかしたらそこのトコも聞き出せるかも知れないのよ。そうなりゃ、きっとスクープね」
でも、詩織の言葉が聞き取れなかったように母は続けた。
母の仕事はある女優の息子だと噂されている元子役を探すことだったのだ。
相澤隼。
詩織と同じ保育園に通っていた三歳歳上の先輩だった。
詩織の父が保育園で見た限りでは何時も寂しそうにしていたそうだ。
『彼には色々な噂があって、でも『みんなデマだから信じないように』って園長先生が言っていたよ』
この前、電話でそう言われた。
父は何時も子供達を三人自転車に乗せて保育園に通っていた直美のお母さんが、急に態度を変えたことが不思議でならなかったそうだ。
実は、直美のお姉さんがブランコの後ろから近付いて頭にタンコブを作ったことが関係しているらしいのだ。
でも父は違うと思っていたようだ。
父は私が保育園時代の友人と再会したことを報告した時、何かが引っ掛かったそうなのだ。
そして思い出したことを教えてくれたのだった。
「駄目。相澤隼さんのことは調べては駄目。お母さんはきっと知らないと思うけど、私は同じ保育園だったの」
詩織は直美との会話を思い出していた。
きっと又逃げ出すに違いない。
そう感じたのだ。
《怜奈(れいな)》と言うその女性には相澤隼と言う息子がいるらしいのだ。
代理母……
それはあくまでもマスコミによる報道だったが、その裏事情を母はカルフォルニアまで行って調べていたのだ。
あわよくば、その取材で二つの番組を製作する予定だったのだ。
もし代理母の一件が本当のことだったら母は特ダネを物にすることが出来るのだ。
相澤隼はカルフォルニアで代理母としての怜奈が産んだとされていたのだった。
「これから最後の交渉に入るトコよ。今この近くにいるらしいの。ホラ、時計台の向こうに見える駅前のマンションよ」
「えっ、そんな近くに芸能人だった人が住んでいたの?」
「もしかしたら詩織も知っているかも知れないな。二年くらい前にソフトテニスの王子様って騒がれていた相澤隼さんって言う人よ」
「駄目」
思わず詩織は言った。
マスコミから隠れるようにアパートから逃げ出したことを聞いていたからだった。
「彼には大女優の息子ではないのかって噂が常に付きまとっていたの。もしかしたらそこのトコも聞き出せるかも知れないのよ。そうなりゃ、きっとスクープね」
でも、詩織の言葉が聞き取れなかったように母は続けた。
母の仕事はある女優の息子だと噂されている元子役を探すことだったのだ。
相澤隼。
詩織と同じ保育園に通っていた三歳歳上の先輩だった。
詩織の父が保育園で見た限りでは何時も寂しそうにしていたそうだ。
『彼には色々な噂があって、でも『みんなデマだから信じないように』って園長先生が言っていたよ』
この前、電話でそう言われた。
父は何時も子供達を三人自転車に乗せて保育園に通っていた直美のお母さんが、急に態度を変えたことが不思議でならなかったそうだ。
実は、直美のお姉さんがブランコの後ろから近付いて頭にタンコブを作ったことが関係しているらしいのだ。
でも父は違うと思っていたようだ。
父は私が保育園時代の友人と再会したことを報告した時、何かが引っ掛かったそうなのだ。
そして思い出したことを教えてくれたのだった。
「駄目。相澤隼さんのことは調べては駄目。お母さんはきっと知らないと思うけど、私は同じ保育園だったの」
詩織は直美との会話を思い出していた。
きっと又逃げ出すに違いない。
そう感じたのだ。
《怜奈(れいな)》と言うその女性には相澤隼と言う息子がいるらしいのだ。
代理母……
それはあくまでもマスコミによる報道だったが、その裏事情を母はカルフォルニアまで行って調べていたのだ。
あわよくば、その取材で二つの番組を製作する予定だったのだ。
もし代理母の一件が本当のことだったら母は特ダネを物にすることが出来るのだ。
相澤隼はカルフォルニアで代理母としての怜奈が産んだとされていたのだった。