早春譜
 最初の活動は吟行となった。
俳句作りを楽しみながら学ぼうとの淳一から提案だった。


其処は高校脇にある砂利道のランニングコースだった。
だから淳一は其処なら許可が下りると踏んだのだった。




 「この川の土手を見てごらん。今は花はないが、春には菜の花やカラシ菜の花も咲く。足元にある小さな花にも季語があるんだ」


「先生、講義はいいから早く作り方教えて」


「えっ、俳句の作り方も知らないで此処に入ったんか?」


「全く、先生には冗談も通じない」


「えっ、あ、そう言うことか? 大人をからかうもんじゃない」


淳一はそう言いながら、葉書大の用紙とクリップの付いた鉛筆を渡した。


「これに浮かんだ句を書き留めておくんだ。後でその中から発表してもらうからな」


「えっー、初っぱなからですか?」

ブーイングでも起こりそうな雰囲気だったが、結局何だかんだ言いながらも和やかなうちに第一回の吟行は進行して行った。




 「工藤先生。此処にタンポポが咲いてます」


「タンポポって春に咲く花だと思ってましたが」


「今は年がら年中だな。実は昔のタンポポとは種類が違うんだ。これはアカミタンポポみたいだな」


「アカミタンポポ? 先生母からセイヨウタンポポの話は聞きましたが……」


「セイヨウタンポポもアカミタンポポも昔あったカントウタンポポを侵食して行ったんだよ。ほら、ガクを良く見てごらん。反りかえっているだろう。カントウタンポポのは花に密着するように咲くんだ。今ではあまり見られなくなったな」


「先生。白いタンポポもこの頃良く見られますが、あれもセイヨウタンポポなのですか?」


「あれはシロバナタンポポって種類らしいよ。確かウスギタンポポってのもあって、シロバナタンポポに良く似ているらしいな」


「先生。タンポポに詳しいんですね」


「大学時代の友人に詳しいのがいるんだよ。その受け売りだ」


「持つべき者は、ですね? あれっ先生。これさっきのタンポポと違いますね?」


「あっ、それがセイヨウタンポポだ。花の上が赤みかかってないだろう?」


「本当だ」


「先生。帰り花って、タンポポには当てはまらないってことですか?」


「おっ、良く勉強してるな。その通りだ。帰り花や戻り花は春に咲く花が秋にも咲くことなんだ。タンポポは冬以外殆ど咲いているからな」



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