Time Paradox
アドルフとリリアーナはさっきまでの場所に戻ると、踊りに行こうとしている2人を引き留めた。

「悪いのですが、ちょっと聞きたいことがあって…」

アドルフは声を落としてそう言うと、フローラが周りを見回して言った。

「場所を変えましょう?」

その言葉に2人は頷き、盗み聞きされる心配のない部屋に移動することにした。


4人は比較的ホールから近く、安全な部屋に入った。

「それで、話って言うのは?」

「それがね…」

そう言ってリリアーナはできるだけ小さな声で昨日の出来事と今日の発見を話し始めた。



「なるほど!たしかに僕もルイスさんが何でアリティア王国のお城によく来るのかなぁって不思議に思ってたんだよね。」

「1〜2時間くらい大臣とお喋りして帰っていくみたいよ。何だか複数の大臣と話し込んでることもあったみたいだけど…あんまりルイスさんのことは気にしたことなかったから分からないわ。」

フローラはそう言って肩をすくめた。

だが何かに気が付いたのか、アドルフらはっとした。

「…もしかして!この前の隠し通路の事と何か関係があるのでは?父上にアリティア王国が有利になる条約を結ばせたのも、きっとその大臣達のためなんですよ!それで彼らにその対価を払ってもらう…それならつじつまが合うのでは?」

「そうね、それしか考えられないわ!…だとしたら、私の暗殺もその大臣達が頼んだってことになるわね。」

「…でも、何のために?条約や貿易のためなら別にハンナ様を殺す必要はないのでは?」

リリアーナが頭を抱えてしまった頃、意外にもフローラが口を挟んだ。

「…なんだっけ?そのなんちゃら家のお手伝いさんいわく、ルイスさんに直々に頼まれたんでしょう?誰に頼まれた訳でもなく、本当にルイスさん自身があなたを殺そうとしたのでは?」

「なるほど!その可能性もありますね。」

「ハンナさんに何の恨みがあるのかは分からないけどね。」

「まぁでもだいぶ分かってきたわ!2人とも、協力してくれて本当にありがとう!」

「いえいえ!」

「そろそろパーティーに戻ろうよ!」

「そうですね、みんなに怪しまれないうちに。」

そうして4人は静かに部屋を出ると、何事もなかったようにパーティーの人混みに紛れ込んだ。
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