Time Paradox
その夜、リリアーナはなんとなく落ち着かない気持ちでバルコニーに出ていた。

日に日に秋めく夜風に身を震わせ、ネグリジェの上の羽織を身体に巻きつける。

そうこうしながら、嫌でも頭から離れないジャックの存在に、リリアーナは苛立ちを感じ始めていた。

今夜はどういうわけか、胸騒ぎまでもが付いて回るのだ。


リリアーナは苦しい胸で息を吸い込み、大きな溜息をついた時、後ろから誰かが腕を回した。

「…ハンナ様、そろそろ入らないと風邪を引きますよ?」

アドルフはそう言って、リリアーナの肩を抱きながら部屋の中へと誘導した。

部屋に入ると、リリアーナは羽織をハンガーに掛け、そのままソファーに座った。

「ハンナ様、そろそろベッドに…」

「嫌な予感がするの…何となく。居場所を伝え合う魔法をよく使う相手って、そういうのを感じ取ってしまうらしいじゃない?」

リリアーナが投げやりにそう言うと、アドルフは隣に座って続きを促した。

「…何だろうね、ジャックが今何をしてるのかは分からないけど。でも何となく…私にとって好ましくない状況なんじゃないかなぁって。」

そんなリリアーナの言葉に、アドルフは少し考えてから声を掛けた。


「…ハンナ様も同じようなことをすれば、ジャック様も何となく勘付くのでは?」

「…勘付いたところで、きっと何とも思わないわ。」

だがアドルフは、今にも泣きそうなリリアーナの腕を取り、ベッドへと誘導する。

そして電気を消すと、リリアーナを押し倒すような形で覆いかぶさった。

「…それはやってみないと分からないのでは?」

アドルフが言うと、リリアーナはただ彼を見つめ返した。

そして、試すようにリリアーナの服のボタンに手をかけるアドルフに対し、小さく口を開いた。

「…好きにしたら?どうした方がいいのかなんて分からないし…アドルフに任せる…。」

アドルフは、まるで他人事のように言うリリアーナの顎に手をかけ、自分の方を向かせた。

「…嫌なら止めるけど?」

アドルフが挑発的に言うと、リリアーナは彼の後頭部に手をかけて引き寄せ、強気な表情を見せた。

「…からかわないで。試してみるに決まってるでしょ?」

リリアーナが言うと、アドルフは彼女のボタンを上から順に外しながらキスをした。


そして2人は何度も唇を合わせ、徐々に深いところへと入り込み、やがて奥深くで重なり合った。


やがて行為が終わると、リリアーナはアドルフの腕に頭を乗せていた。

だが、リリアーナは堪え切れずに背を向けると、声を殺して泣いていた。

そんなリリアーナの様子に気付いていたアドルフだが、何も言わず背中をさすってやることしかできなかった。
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