Time Paradox
「…ねぇジャック、お願い…今夜は一緒にいてくれない?」

くぐもったルクレツィアの声が、おそらくジャックにだけは聞こえただろう。

「…いや、でも…」

ルクレツィアは顔を上げ、ジャックの声を遮る。

「両親と住んでる家の他にマンションを借りてるの。」

「それって…」

ルクレツィアの目は涙で潤んでいる。

「…あなたには彼女だけってことくらい分かってるわ。でもだかこそ、私達のこの関係を繋ぎ止めておくものが欲しいのよ…!」

ルクレツィアはそう言って目を逸らした。

「…本当にそんなんでいいのかよ…」

ルクレツィアは答えなかったが、返事の代わりにジャックの手を強く握った。

「…分かったよ、それでルクレツィアさんが納得するんだったら。」

ジャックが言うと、2人は何も言わずに立ち上がり、夜の闇へと消えて行った。
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