Time Paradox

探り合い

二人が飲み物の乗ったお盆をテーブルに置き、ルクレツィアが口を開いた。

「みなさん何も飲まれていないと思って…持ってきましたわ。」

「あらお二人とも…ありがとう！でも何もウェイターの方に頼めば良かったのに…」

イザベラはそう言いながらグラスを手に取り、その場にいた人達に配った。

「いいのよ、気にしないで。」

ニコラスはその会話も聞いていないのか、気にしなさ過ぎる様子で口をつけている。

「あ、これ飲みやすくていいね！俺ワインそこまで好きじゃないんだけど…何入ってるの？」

「赤ワインをジンジャーエールで割りました。メニューにはワインとシャンパンしか無かったので、私が裏で作ったんです。私はこれが好きでよく飲んでますわ。」

それを飲んでいたデイジーもハッとして口を開いた。

「あの…私もこれ好きなんです！メニューにはないみたいですけど、こういう所だと言ったら一通りウェイターさんが作ってくれるはずですよ。まぁ、忙しい時にあんまり手間のかかるものを頼まれると嫌な顔されますけどね。」

最後の言葉をルーカスに向けて言うと、彼は苦笑いを浮かべた。
というのも、普段舞踏会でカクテルを頼んでいるのは主にルーカスなのだ。


その場にいたほとんどの人が飲んでいたが、デリックだけは手を付けずに様子を見ていた。

「デリック、飲んでないんじゃない？」

「…あぁ。俺はあまり酒が飲めないからな…」

だが、イザベラやニコラスがニヤニヤと「飲んでみてよ〜」と促している。

仕方なくデリックは口をつけて飲んだふりをしていると、ちょうどアドルフがやってきた。

「お久しぶりです、アーノルド家の皆様と…珍しいですね、デルーロ家のお二人ではないですか！」

「でもほら、俺たち婚約するつもりだから珍しくもなくなりますよ！」

「ちょっ…」

ニコラスはイザベラと繋いだ手を上げて見せると、イザベラは顔を赤くした。

「これはこれは…幸せそうで何よりです。」

アドルフはついジャックの方に目を向けると、視線がぶつかってしまい、お互いバツが悪そうに目をそらした。


だが、二人の間だけに流れる気まずい空気を感じ取ったのはランスだった。
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