Time Paradox

信頼

その夜、リリアーナは今日1日だけで1ヶ月分の疲れが押し寄せているような感覚だった。

夕食でもクラリスとマーカスは言い争い、アドルフとは朝食以来口を聞いていない。

その上、アビーを始めとした城中の人間が自分に不信感を持っているのだ。

今この瞬間も誰かに見られているように感じ、自分の部屋でありながらも居心地が悪かった。


就寝時間になると、一度ベッドに入ってみたものの全く寝付けず、深夜1時を回った頃にはそっとベッドから出ていた。

寝間着を脱ぎ捨て、クローゼットを開けると深緑色のワンピースに着替えた。

さらに髪を2つで三つ編みにし、茶髪から戻りかけた金髪を隠すようにフード状の頭巾を深く被る。

そしていつものようにランタンに灯を点け、
足音を殺して隠し通路から外へと抜け出す。


ランタンを消して地上に出ると、小さな芝生の先には月明かりに照らされたアーニャ川が見える。

誰もいない事を確認し、地下からの出口であり入り口となるフタをそっと閉めた。


完全に寝静まったモンフォワーシュを歩くのは、この街に帰って来てから二度目のはずだ。

リリアーナはさらにフードを深く被ると、周囲に気を配りながら早歩きである場所へと向かった。

城からそう歩かずにその大きな屋敷に辿り着くと、外側から手を回し、あまり機能していないその不用心な門をこじ開けた。

そして中に入って門にまた鍵を掛けると、貴婦人なら四人は並べるほどの幅を持つ扉を叩いた。


まだ真ん中の部屋の明かりは点いていたので、程なくしてこの家の一番の長老がその大きな扉の片方を小さく開いた。

「こんな夜更けに…」

ため息混じりにそう呟きながらも、怪しげな深夜の訪問客を見る。

下を向いていたリリアーナは水色の瞳を男に向けると、長老の男は一瞬目を見開いた。

だが事情を察したモーリス・アーノルドは静かに頷くと、リリアーナを屋敷に招き入れた。
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