Time Paradox
モーリスは玄関の鍵を閉め、灯りが点いていた広い書斎の暖炉にリリアーナを招き入れると、暖炉に魔法で火をつけた。

そしてデリックとイザベラ、ルーカスまでもが何事かと部屋に集まって来ている。

「…びっくりしたわ、こんな時間に来た人を屋敷に入れるなんてお父様どうかしちゃったのかしらって思ったけど…リリアーナ様だったのね!」

「あぁ。そんなフードを目深に被っていたものだから、私も最初は過激派の反人間界化の人かと思ったんだがな…」

イザベラとモーリスがそう言った。

「でも、こんな状況でこの屋敷にやって来るなんて…もしまた懸賞金がかかってしまった時に差し出される可能性は考えなかったのですね?」

ルーカスの言葉にリリアーナが思わず顔を上げると、彼はすかさず「冗談ですよ」と笑い、一気にその場の緊張感が緩んだ。

だがその瞬間リリアーナは痛いほどに喉の奥が熱くなり、大粒の涙がせき止められる間も無く頬を伝っていった。

「おいルーカス、お前が余計な事言ったからだぞ!」

「いや、僕は結構フォローのつもりで…」

「ふふっ…ルーカスは女の子を泣かせておいてそんな事言っちゃうのね?」

デリックとイザベラがそう茶化している間に、モーリスはリリアーナを宥めながら椅子に座らせていた。

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