Time Paradox
ニコラスは小さなキッチンに立つと、戸棚から二人分のティーカップとティーポットを取り出した。

「もしかしてここでお茶もできるの?」

「あぁ。なんでも揃ってるから生活もできるし!」

そう言ってニコラスはお茶を淹れると、今度はカゴから焼き菓子を取り出した。

「…それにしても最近の貴族に関する新聞の記事、すごいわね。私たちのことが世間に知られるのも時間の問題じゃないかしら?」

イザベラが紅茶をすすりながら何気なく話題を振ると、ニコラスは顔を上げた。

「…いや、俺たちは…大丈夫だよ。」

「…どうしてそんなことが言えるの?」

ニコラスはいつになく真剣に、イザベラの目を見て答える。

「…大丈夫、イザベラは俺が守るよ。絶対。」

「…どういうこと?」

だがニコラスはその意味を答えることなく、二人の間に置かれた焼き菓子に手をつけるだけだった。
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