Time Paradox

家族で夕食を囲む大きな部屋へとたどり着くと、両開きのドアを自分達で開ける。

「あら、みんな揃ってたのね！ごめんなさい遅くなったわ。」

イザベラはそう言うと、リリアーナを横に座らせてから自分も座った。

「イザベラ様、お着替えをなさっていたのですね！」

さすがはデイジー、その鋭さはやはり同年代の女子だ。

「そうなのよ！全くもうイザベラってば着替えるって言って聞かないの…」

リリアーナは呆れたように言うと、幾分体調の良くなってきているモーリスが手を合わせ、皆もそれに続いた。


「それにしてもイザベラ、大丈夫なのか？その…ニコラスって男は。女関係に関していい噂なんて聞いた事もないぞ。」

デリックはあくまでも落ち着きを払った声で言うと、ほおが緩んでいるイザベラは右手にあったスープのスプーンを置いた。

「ふふふ。聞いて、今日は彼の秘密基地に案内されたわ！すっごく小さくて可愛いお家…私以外の人間…いや、家族ですら知らない場所だと言ったわ！」

「秘密基地…！デイジー、何もされてないのか、大丈夫か！？」

ルーカスは思わず立ち上がったデリックを宥める。

「まぁまぁ兄さん、もうデイジーもいい大人なんだしそんなに心配する事ないよ。それで？」

「二人っきりでお茶をしたり、彼の家族である猫を見せてもらったり。たしか可愛い写真があったはず…」

「イザベラ、さっきあなた落としてたわよ。この猫ちゃんの写真でしょう？」

リリアーナが笑いながら差し出した。

「そうそう、この猫ちゃん！白黒でね…」

イザベラが全員にその写真を向けたその時、玄関から大きなベルが鳴り響いた。

その場にいた全員が顔を見合わせ、またリリアーナの方を見る。

「また隠れた方が…」

「待て、私が行こう。もし城の者がまたしつこくやって来ているのであれば私がきつく言っておく。済まないがデイジーには見えない位置から見張っていてほしい。城の者だと分かった場合はすぐにここにいる人間に知らせに行ってくれ。」

「かしこまりました。」

デイジーの返事を聞くとすぐ、モーリスは腰を上げ、食堂を出て行った。

デイジーも後に続くと、残されたリリアーナ達には張り詰めた空気が広がった。