Time Paradox
リリアーナが壁の燭台に目線をやると、どういうわけかすぐに火が灯った。

「まさか…今朝の夢で見た場所だわ…!」

「ここはあなたには所縁のある場所のはずよ。すぐに思い出すわ…今は覚えていないとしても。」

妖精はそれだけ言うと、見覚えのある緑色の蔦や苔に覆われた鉄扉の前で止まった。

「さぁ、今日受け取ったばかりのその指輪をかざして呪文を唱えるのよ。」

「呪文…呪文?そんなの知らな…」

そこまで言いかけた所で、ふと言葉にならない呪文が湧き上がってくる感覚に襲われた。

すかさず指輪のトパーズの部分を鍵にかざし、リリアーナは遠い昔から知っているようなその呪文を唱える。

すると大きな鉄扉が軋む音を立てながら部屋の内側へ開いていく。

部屋の中を覗き込むと、壁や地面や天井から水色の宝石の原石が光り輝き、まるで歓迎しているかのようだった。

どこか懐かしさを感じるその原石は、リリアーナの瞳と同じ色をしていた。

「さぁ、もう時間がないわ!」

妖精がそう捲し立てるが、リリアーナの耳には届かなかった。

そしてリリアーナは、そうすることが当たり前かのような気持ちでその原石に触れた。その瞬間、物凄い量の記憶が身体の中を駆け巡った。

おおよそ短い人生が、リリアーナの中で何周分も再生される。

そしてリリアーナはその場で意識を失った。
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