Time Paradox
リリアーナとデリックは部屋へと戻り、窓からアドルフ王子が来るのを密かに待っていた。


「なぁ、王子がイザベラになんて惚れると思うか？」

リリアーナは実の妹をそんな風に言うデリックに驚いたが、イザベラの容姿はとても魅力的だと思っていたため、首を縦に振った。

「だってあんな女性に言い寄られたら断れないでしょう？」

デリックはその言葉に苦い顔をする。

「別にあんな女、下品なだけだろ。いっつも無駄に露出高くて。」

リリアーナは黙り込んだ。イザベラを下品と言ったことを否定しきれないというのもあるが、何となく彼の言うことには兄としての愛情があるのではないかと思ったからだ。

「露出の高い服を着てる妹が心配だから？」

リリアーナが意地悪っぽく笑うと、デリックの顔は心なしか赤くなった。

「なんでそうなるんだよ！俺はイザベラもルーカスもみんな嫌いだ！」

「そこまででもなさそうだけどなぁ…？」


2人が言い合いをしていると、門の前に長いリムジンのような黒い車が停車するのが見えた。

「おい、あれって…」

「…お城の車だわ。」


最初に出てきたのは黒いスーツに身を包んだ男だ。

その男が外からドアを開けると、リリアーナの見覚えのある栗色の髪の男が出てきた。

瞳はブルーにも見えるグレーで、ほっそりとした夜会服を着こなしている。

「…アドルフ…」


アドルフは車から降りると、アーノルド家の立派な庭を渡り、屋敷へと歩いてきた。
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