Time Paradox
これから働くレストランは川沿いにあり、少し歩かなければいけないようだった。アーニャ川のある辺りである。

アパートを出てすぐに大通りがあり、2人はそのまま横断歩道で大通りを渡った。

渡り終えるとアーニャ川が見えてきたようだ。
2人は川沿いに右に曲がり、しばらく歩き続けた。

サンドイッチ屋を越え、2人がディナークルーズをしに船に乗った桟橋も越える。



しばらく歩いて行くと、白いテーブルと椅子の置いてあるテラスが見えてきた。

「あれかしら?」

リリアーナが指を指すと、ジャックが地図と見比べて「間違いないな」とだけ言った。

2人は店の前のウッドデッキを歩き、ドアを開けた。

空いている時間とはいえ、食事をしている客はちらほらといるようだ。


「いらっしゃいませ、2名様でよろしいでしょうか?」

店に入るとすぐ、女性店員がにこやかに対応した。

「いえ、アルバイトをしようと思って…」

「ではお二人には裏で店長と面接をしてもらいますね。…とは言っても忙しいので、落ちるどころか今日のうちに働かされますよ。」

店員はジャックの声を遮るように言い、後の方は小声で言った。

2人はバックヤードまで案内されると、店長が来るまで座って待っているよう言われた。


「面接って何を言うのかしら?」

「別に大したことは聞かないだろ。普通に答えれば落とされないはずだ。」

落ち着かないリリアーナに対して、ジャックはいたって冷静だった。


やがて店長らしき男性が入って来ると、ジャックが立ち上がってお辞儀をしたので、リリアーナも慌てて同じことをした。

「やぁ、今日は来てくれてありがとう!君たちの履歴書を見せてくれるかな?」

ジャックはすぐに出せるよう準備をしていたようで、それを店長に渡していた。

リリアーナも急いで鞄の中の履歴書を店長に渡した。

店長は見たところセドリックと同じくらいの年齢で、シワだらけの大きな手にはマメがたくさんできていた。

店長は2つの紙にサッと目を通すと、立ち上がって言った。

「そうか。ジャック君にリリアーナさん、今日からよろしく。」

「「よろしくお願いします。」」

2人は声を揃えて言うと、店長は頷いた。

「それじゃあ私は仕事に戻るから、あとのことはそこにいるハレーに聞いてくれ。」

いつからいたのか、ドアの前に先ほどの女性店員が立っていた。
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