Time Paradox
リリアーナは椅子に座ると、ジャックに今後の計画を打ち明けた。

「私、両親を助けようと思って。」

「両親を?でももうこの世にはいないはず…」

「それなんだけど…」

リリアーナはアーノルド家に連れ去られる前の、夜中のモンフォワーシュ駅での出来事を話した。



「…こういうわけで、私の両親が生きてた頃に行ってみようと思うの。あの絵本の通りにすればきっと上手く行くはずだわ!」

「そのやり方って?」

「…それが、読んだのが昔過ぎて思い出せないの。森で妖精を呼び出すんだけど、そのやり方が…」

「肝心な所忘れたんならなぁ…その爺さんにはまた会えないのか?」

「どこにいるのかも分からないし、記憶を失くす前と取り戻した後にしか会ったことがないのよね…。」

「…だったら孤児院に行って絵本を貰ってくるしかないか。いつ会えるかも分からないような爺さんには期待しない方がいいな。」

「そうね。明日はバイトが早いから、それが終わってからはどうかしら?」

「あぁ、そうするしかなさそうだな。
…それにしても、リリアーナを見かけた人がたくさんいるっていうのは危険だな。ハンナ・ケインズが生きているっていう噂が流れて、リリアーナを捜し出す人がますます増えるだろう。」

「…さっきの大学生なんて、目の色と髪の色を変えても気付いてたわ。」

「いや、さっきのはリリアーナの言動でバレたんだよ。」

「…でも、あのレストランにさっきの人達が来てしまったら?」

「その可能性も考えられなくはないな…まぁあいつらにそれだけの金があれば、の話だけどな。」

その言葉にリリアーナは真面目な顔でうなずいた。


「今後は危険だと思ったら俺が対応するよ。さっきの奴らが来た時とかな。」

リリアーナは、頼もしそうに輝くグリーンの瞳を見つめた。


「…ジャック、本当にありがとう。私なんかに協力した所で何か得するわけでもないのに…」

ジャックはリリアーナに見つめられ、つい目をそらす。

「…いや、その、あれだ!リリアーナにはいろいろと借りもあるし、悪いことしたなぁってのもあって…まぁ上手くいったら王子と仲良くな!」

「えっ?アドルフとはそんなんじゃ…」

「まぁまぁ、素直になれって。明日も早いし今日はもう寝よう!おやすみ。」

「え、あぁ。おやすみ。」

そう言うが早く、ジャックはそそくさと部屋を出て行った。
彼は何かを勘違いしているようだ。
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