Time Paradox
マーカスのいる大きな部屋から出ると、リリアーナとジャックを引き連れた一行は地下へと続く古い階段を降りた。

リリアーナは、この階段がどこへ繋がっているのかを知っていた。


国に関わるような重大な事件を起こした者はその牢獄に入れられるのだ。

2人は何の抵抗も見せずに、言われるがままに鉄格子の中へと入れられた。

リリアーナとジャックは同じ牢屋ではなかったが、隣どうしだった。

それに、決して広くはない部屋が鉄格子で仕切られているだけなので、普通に話もできるようだ。


「…ねぇジャック、私達って同時に殺されるのかしら?」

「そうだろうな。でも死刑っていつ殺されるのかは分からないらしいからな。あの人のさじ加減によるんじゃないか?」

リリアーナはその言葉に唖然とした。

「…じゃあいつ死ぬかも分からないような状況でここに閉じ込められたままなの?いつかは頭がイカれちゃうわ…。
でもイカれちゃった方が幸せかしら?」

リリアーナは訳のわからない事を言いながらため息を吐いた。
何もかも諦めているようだった。


「ギロチンと絞首刑だったらどっちの方がいいのかしら?…今時ギロチンはないわよね。でもマーカスがこの上なく私を恨んでたとしたらもっと酷い見せしめにされるかも…」

ジャックは何も言わなかった。


「…ジャックは逃してもらってね。何も悪いことしてないんだから。」

「いや、逃がしてもらえないだろ…かくまってただけで罪なんだから。」

「…いや。あの人が恨みのない人間を殺すとは思えないわ。そのうちジャックは釈放されるはずよ。」

「そうだといいけどな。」

そう素っ気なく言ったジャックを見て、リリアーナはなぜか悲しくなった。


「…ジャック、本当にごめんなさい。私のせいで…。」

リリアーナはそう言って目を伏せると、ジャックは何でもない事のように笑って言った。

「俺達がリリアーナをモンフォワーシュに連れて来たからこうなったんだよ。ある意味自業自得だ。俺が釈放されたらどうするか考えなきゃな。きっとアーノルド家の人達なら力になってくれるはずだ!」

リリアーナは言葉が出なかった。


「ジャック…」

そしてジャックの無条件の優しさに、リリアーナの目には涙が溜まっていた。


「…私、まだ…」

「あぁ、まだ死ぬわけにはいかないな。」

ジャックはそう言って微笑んだ。
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