鬼部長の素顔



『そ、そうですっ。部長がいなくて寂しくて、声が聞きたくて電話したんですっ』



「……。」



……あっ!…言ってしまった。
ずっと我慢していたのに……
しかも部長無言だし。
あー、もうだめだ。



『き、切りますね、おやすー』


「俺もだ」



私の言葉にかぶせるように部長は言った


「俺も、何度も電話しようとした。けど優子の声を聞きたいのも、会いたいのも俺だけかと思ったら、出来なかった」


部長……。
やばい、涙出そう……。


「優子、泣くなよ。今泣いても、抱きしめてやれない。仕事放り投げて帰りたくなるから」



『だ、だめですよ!仕事はしてくださいっ!……それに、私は泣いてませんっ!』


そう言うと笑ってくれた
なんだ。寂しいのも、会いたいのも
私だけじゃなかったんだ
電話して……良かった。

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